口腔ケア

2000年に要介護高齢者が28万人に達し、以後もその人口は増加し、2030年には550万人になると推定されています。 そして、要介護高齢者の死因の1位は、ガンでも脳祖中でもなく、肺炎です。厚生労働省老健局計画課監修の介護予防テキストによると、 要介護状態になる3大原因は、①骨折、②閉じこもり、③上気道感染、と記されています。 そして、高齢者の上気道感染の最たる予防法として口腔ケアが強調されています。 要介護者にとっての口腔ケアは、単に口腔を清潔にするだけではなく、上気道予防するケアです。さらには介護予防のケアでもあります。 究極のところ命を救うケアであると認識すべきです。

うしょく症(むし歯)

うしょくは、歯の表面に付着した歯垢に含まれる微生物によって炭水化物から有機酸が産生され、歯の脱灰ならびに崩壊をきたす疾患です。 うしょくの発生には、宿主および歯のうしょく感受性、うしょく原性をもつ細菌(ミュータンス菌など)の存在、 歯を取り巻く環境因子(唾液、歯垢、食物)などが関与しています。
虫歯については、前述の村津先生は、「虫歯は感染症、ならば根絶できる」と言っています。 国民の虫歯は増え続け、依然解決できないでいる最大の原因は、虫歯を根絶するために、 国民や国が明確な意思と強い決意を持って何らかの画期的な方法を開発してこなかったからですと言っています。 よく虫歯の増大を砂糖や歯磨き不良のせいにしたり、母親の子供に対する注意不足のせいにしたりしますが、これも間違いのようです。 もちろん生活習慣の改善によってある程度、虫歯を抑制することはできます。しかし本質的に虫歯は感染症です。 いくら歯磨きを良くしても、砂糖をある程度制限しても、母親がいくら気を付けていても、口は物を食べる入口ですから、いったん感染すると虫歯は発生します。 ペストが蔓延して人々が苦しんでいるときに、食べ物が悪いからだ、清潔にしないからだと言って、まるで竹やりで戦車と戦うように、 生活習慣の改善だけを国民に強いても意味がありません。虫歯と戦うためには、ペスト菌根絶を抗生物質の開発で達成したように、 虫歯菌の根絶を可能にする何らかの画期的な方法が必須です。

一般的には、虫歯を予防するには、①歯垢と細菌の量を減らす、②歯の抵抗性を高める、③細菌の活動しない環境を維持することとされています。 その有効な方法としては、ブラッシングやがんそう剤(うがい薬)などによるプラークコントロール、 歯質の脱灰抵抗力を高めるフッ化物の塗布や洗口ならびにフッ化物含有歯磨き粉の使用、酸産生量を抑えて再石灰化を促すキシリトールガムの使用、 うしょくを起こしにくい食品の選択、規則正しい食生活などがあります。定期的に検診を受けて早期発見、早期治療を心掛けることが大切です。